ポスト団塊世代のお気楽な日々

初老に近いおばさんが自由気ままに書き綴る自分勝手なひとり言

★やかん頭


昨日、公民館発行の広報誌の編集会議に出かけた。
広報委員長は、市役所を早期退職、今は不動産所得で悠々自適のYさん。
別に訊きもしないのに、昭和26年生まれだと言われていたから、今、56歳か57歳。
既に生え際が後退、頭頂部の髪の毛も薄くなっていて、年齢よりも老けて見える。

編集委員の一人に、ケリー・チャン似の美人、Sさんがいる。
年齢は、多分、わたしと同じくらいだろう、と思う。

会議が終了して帰ろうとしたら、Yさんが持参したアルバムを見ないかと声をかけてきた。
今、広報誌で公民館創立時の特集を企画している。
30数年前のことなのだが、Yさんは、当時の公民館活動の写真を何枚か持っているそうだ。
その写真をアルバムから抜いて持ってきたのではなく、アルバムを3冊、持参していた。

編集委員(女性ばかり)4人と、Yさんが、古いアルバムを囲んだ。
何故だか、Yさんの中学生・高校生時代の写真まで紛れ込んでいる。

「エ〜〜〜っ、これがYさん?ちょっと、わからないよねぇ〜」
などとキャーキャー言いながら、4人はにぎやかにページをめくる。
Yさん、にやけた顔で、「メガネなんか、今と全然、違うもんなぁ」と言って喜んでいる。

30数年前と言えば、男性の長髪は珍しくなかった。
Yさんも、長髪だった。
もちろん、ふさふさしていた。

Sさんは、思ったことを直ぐに口にする。(それは、わたしの比ではない)
「なにしろ、髪が全然、違うもんね」
と、Yさんの頭部に視線をやりながら、邪気のない顔で言う。
3人は、俯いて笑いをこらえる。

Yさんが、ひとりの男性を指差して言った。
「これ、公民館のやかん……仕事……△△さん……」
よく見ると、耳の上にわずかに髪の毛を残すだけの、みごとな禿頭の男性だ。
4人がはっきり聞き取れなかった様子なのに気づいて、Yさんが、更に禿頭男の補足をする。

Sさんが言った。
「な〜んだ。やかん頭の、って言ったのかと思った。アハハ」
それを聞いて、3人も、いっせいに噴き出した。
ふと、視野に憮然としたYさんの顔が入った。
思わず十年後のYさんのやかん頭を想像した。
わたしは笑うのをやめ、
「そっかぁ、公民館の夜間の泊まりの仕事を△△さんって人が昔してたんですね?」
と、優等生的発言をして、Yさんに話を振った。
Yさん、再び、いきいきと△△さんの思い出話を始めた。

あの時、思わずYさんを気づかったわたし。
本当に、わたしって、いい人だ。