★どっちもどっち

ハワイ旅行（７）

年を取ると、勘違いや思い込みが激しくなる。
中高年夫婦が旅行すると、それが元で諍いになることも珍しくない。

朝、部屋を出てエレベーターに乗ったとき、夫がデジカメは持ったか、とわたしに訊いた。
デジカメはたいてい、わたしのバッグの中だ。
部屋を出るとき、デスクの上にもデジカメはなかったから、バッグに入っているだろうと思った。
それでも、夫が不審の眼差しで見つめるので、バッグの中を探った。
無い、おかしい。
ともかく、部屋へ戻ることになり、再び昇りのエレベーターに乗り換える。
夫は「情けないっ！シャンとしろよ、シャンと！」とわたしを叱る。

部屋に入り、デスクの上を見る。
無い。
あそこ以外に置く筈はない。
おかしい。
ある筈はないと思いながらも、引き出しを開け、ベッドカバーをめくり、スーツケースを開ける。
無い、どうして？

その時である。
夫が自分のリュックを開いているのが目に入った。
「あった！」
夫は、出かける前、携帯用双眼鏡と間違え、デジカメを自分のリュックに入れたのだった。
デジカメも携帯用双眼鏡もケースが黒で、サイズもほぼ同じだ。
間違えてもしかたがない。
しかし、わたしのせいではなく夫のミスだったとわかり、今度はわたしの方が俄然、優位になる。
「全くもうっ、しっかりしてよっ！」と夫を叱る。

老い先短い夫婦なんだから、これからはもっといたわり合って旅したいものだ。

【What's your name?】