★馬耳東風
昨夜、夫の遠戚のおじさんが渋柿をたくさん持参された。
干し柿にしたらどうかと言って、車で運んでくださったのだ。
もう、けっこう高齢のはずなのに、まだ、車を運転される。
今も息子さんに譲ったお店を手伝いっておられる。
5,6年ぶりに会ったのだが、全然、老いを感じさせない。
肌もつやつやして、若々しい。
お喋りな夫が、次々と話題提供するので、おじさんもなかなか帰ることができない。
その内、やっと話が途切れたので、車の方に向かいながら、おじさんは言われた。
「わたしも、今年は、敬老会の仲間入りをしましたよ。
とうとう、敬老会の案内が来ましたよ」。
えっとー、おじさんの町では、何歳になったら、敬老会の招待状が来るんだろう、75かな、80かな、と考えていたら、夫が言った。
「はぁ、もう85歳になられたんですか」
な、なんということを!
ありえないだろうがぁーーー!!
おじさんの顔が一瞬、こわばったのをわたしは見逃さなかった。
おじさんの車が出発すると、わたしは夫を叱った。
「なんてこと言うのよ、85だなんて。失礼な!
ああいう時は、75ですか?って言うもんでしょうがぁ」。
しかし、わたしの忠告にも、夫にはまるで馬耳東風。
「そうだった…」の反省の言葉もなく、すたすた家に入って行ったのだった。