ポスト団塊世代のお気楽な日々

初老に近いおばさんが自由気ままに書き綴る自分勝手なひとり言

★孫自慢

久しぶりにバスに乗った。

一つ目のバス停で、マスクをしたおじさんが乗ってきた。
後ろがたくさん空いているのに、そのおじさん、「ここに座ってもいいですか」と言ってわたしの隣に座った。
まあ、話好きなおばさんに座られるよりいいかぁと思っていたら、腰掛けるや否や、
「後ろでもいいんだけど、前の方が酔いにくいからねぇ」
と言い訳をし、訊かれもしないのに、
「これ、風邪をひいてるんじゃないですよ、ただの予防」
と言って、マスクをなでた。
お喋りな人なんだろうとは思った。

5分くらい走った頃、おじさんがおもむろに話しかけてきた。
「子どもさんは何年生?」
口火を切るには無難な話題ではある。
「もう学校に行ってるような子どもはいないんですよ。
 一人娘も結婚しました」
と答えると、
「ほー、そうですか。
 うちも娘が一人ですが、御縁があって養子を貰ってねぇ」
と嬉しそうに言って、娘さんの話を始める。
そうですかぁ、よかったですねぇ、などと適当に話を合わせていたら、突然、
「孫が東大で教えているんで、明日は家内と東京へ行くんですよ」
と言った。
養子を貰ったばかりだと思い込んでいたので、驚いて、
「そんなに大きなお孫さんがいらっしゃるんですか?」
と訊くと、おじさん、相好を崩し、
「わたし、50代に見えるでしょ?」
と言って、わたしの方を向く。
まともにおじさんの顔を見る。
はい、と頷けない容貌。
お世辞の言えないわたしが口ごもっていると、おじさん、優秀な孫の話に戻った。
到着するまでの20分間、わたしは辛抱強くおじさんの孫自慢を聞いてあげたのだった。

本当にわたしっていい人だ。