★陰の人
退職後、夫が始めた趣味で、今でも続いているのが写真と川柳である。
川柳熱はしだいに冷めつつあるが、今でも、思い出したように地方紙に投稿している。
掲載されると500円分の図書券が送られてくる。
もう、数回、図書券を貰っている。
ところが、最近は、滅多に投稿欄に載ることがない。
もう止めたのかと思っていたら、久々に本気で頭を捻っている。
テーマが面白いので、わたしにも作れそうと思い、並んで頭を捻った。
なかなかの傑作が出来たので、わたしのも一緒に投稿してもらった。
メールで送ってから2日後、わたしの川柳が新聞に載った。
投稿者は夫の名前になっている。
早速、夫の知り合いから電話があった。
素晴らしい川柳じゃない!
これまで載った中で一番いいと思うよ。
500円どころか、1000円分の価値があるんじゃない。
などと言われたそうだ。
夫は複雑な表情をしている。
わたしが作った川柳だと、その知人に白状しなかったのだ。
自分のプライドがかかっている、などと言う。
(プライドの問題になるのがよーわからんが)
わたしにも、わたしの作だと絶対にバラしてはいけんぞー、口封じした。
しかし、口止めされるとかえって言いたくなるのが人間のさが。
黙っているのは辛いものだ。
掲載された川柳が話題になるたびに、思わず、「実は…」と言いたくなる。
しかし、である。
わたしは、夫のプライドのために陰の人になりきっている。
まだ、誰にも明かしていない。
娘にさえも…。
あっ、ここで暴露してしまったかぁ