頭のいい人
お隣のおじいさんが持参された不ぞろいの野菜のお礼に、焼いて一日経った、ちょうど食べ頃のアーモンドケーキがあったので、これを二人分ほどに切り分けて、夫が持参した。
お年寄りなので、洋菓子はあまり口に合わないだろうとは思ったが、お返しできるようなものが他に何もなかった。
翌朝のことである。
夫が庭の草取りを終え、帰ってきた。
そして、「今、△△さんのおばさんと話したよ」
と、お隣のおばあさんの話を始めた。
「おばさんが、昨日のケーキが美味しかったとー。
やっぱり、頭のいい人が作るケーキは美味しいねぇ、だとー」。
一体、これはどういう意味だ???
ことば通り、単純に喜んでいいのか?
何か、皮肉が込められているのか?
何か、悪意が潜んでいるのか?
納得がいかないので、「どういう意味だろうね」と夫に問いかけると、
「ことば通りじゃないんー。
ユリは、おばさんの中では頭のいい人ってことになってるんよ」
と答えた。
わたしは言った。
「あ、そう。やっぱりねぇ。わかる、わかる。
でも、頭のいい人っていうより、どっちかって言うと、顔のいい人って方が当たってない?」
もはや夫は相手にしてくれなかった。