ポスト団塊世代のお気楽な日々

初老に近いおばさんが自由気ままに書き綴る自分勝手なひとり言

野良猫騒動(3)

Eさんは中に入ると勝手口に進み、腹ばいになって身を大きく乗り出し、たたきの奥を覗き込んだ。

「やっぱり隙間があるよ」とEさんが言った。
驚いて、わたしも腹ばいになって覗き込んだ。
よく見ると、床とたたきの間を塞いでいる壁面に、子猫の頭がギリギリ入るくらいの狭い隙間があった。

何か理由があるのか、手抜き工事なのか、ともかく、完全に塞いでなかったのだ。
わたしにしてみれば、まさか、そんな所に空間があるとは思いもしないので、サッと覗いただけだった。
察するに、わたしが二階から下りてきたので、猫は慌てて勝手口に走り、死に物狂いでその隙間に入り込んだということだろう。

わたしが見たのは幻覚ではなかったのだ。
わたしが聞いたのも幻聴ではなかったのだ。

Eさんが、「チーちゃん、チーちゃん、ここよ、ここよ」と言って猫を呼ぶ。
間もなく、猫はやって来た。
あぁ、これで助かった、と安心するのは早すぎた。
来たことは来たのだが、隙間から出て来ない。
丸一日半、何も食べていないのだから、餌を見せれば出てくる筈だと、Eさんが餌を見せながら、チーちゃん、チーちゃんと呼びながらおびき寄せようとする。
でも、出て来ない。
Eさんが隙間から指を差し出せば、ペロペロ舐める。
なのに、出てこない。

どうやら、出られなくなったようだった。
入ったのはいいが、出られなくなったのだ。
帰宅後直ぐにウォーキングに行こうと思っていたが、それどころではなくなった。

どうやって猫を出せばいいのか。
床下換気口はセメントでガチガチに固定されているので取り外せない。
わたしは、2年前のお風呂のリフォームのとき、配管の水漏れを調べるために、監督さんが和室の荒板をノコギリで切って、床下へ潜って行かれたのを思い出した。
それで、和室の畳を上げて、荒板を取って猫を呼んでみたらどうだろうとEさんに提案した。