雑談(その3)
雑談は続く。
坊守(住職の妻)さんは現在64歳。
痩せて、すらりと背が高く、色白の美しい女性である。
最近、軽い脳梗塞で入院された。
今は、退院され、少し左手が不自由だが、坊守の仕事にも復帰されたようだ。
住職さんが、坊守さんが倒れたときの様子を話された。
救急車を呼んだときのことである。
ほどなく救急隊員が駆けつけ、直ぐに病院に電話で手配した。
そのとき救急隊員の一人が、「老女をひとり送ってもいいですか」
と話したのを坊守さん、聞き逃さなかった。
そして、その言葉にいたくショックを受けたらしい。
(老女…私が老女…)
退院後、坊守さん、そのことをしきりに話題にされるそうだ。
住職さんが言われた。
「老女の一言にかなり傷ついたんでしょうな。
でもまあ、60を過ぎたら老女でしょ。
若いと思っているのは自分だけで。
20代、30代の若い子から見たら、十分年寄りでしょ。
だいたい、老女でよかったじゃないかって言うんですよ。
老婆って言われなかっただけでも」
思わず噴き出した。
全くその通り。
老婆と言われなかっただけでも感謝しないとね。