まゆみ
中国東北部の旅(5)
長春で列車に乗りこみ、瀋陽で下車するときのことである。
高速列車だったので停車時間が2分しかないということで、停車時刻の10分前には乗降口に移動。
中国人現地係員と共に17人が到着を待っていたときである。
同じ乗降口から降りる中国人旅行客がいた。
彼は日本人の団体旅行客に興味を持ったようで、現地係員に色々話しかけているのが見えた。
しばらくすると、現地係員が、わたしの方を見て、「この中国人、黒い帽子女の人、まゆみに似ている言っています」と言った。
まゆみ??
一体、誰?
もしかして五輪真弓??
もしそうだとしたら、全然嬉しくないんだけど…。
などと思っていたら、現地係員が、「中野良子です、中野良子」と言った。
「まゆみは映画の中、名前です。中国で中野良子、有名です」と付け加えた。
わたしの周りにいた男性たちが、「中野良子!すごいじゃないですか」と囃し立てたが、
「中野良子って、最近、全然見ないけど、もうかなりな年の女優さんじゃなかったですか。
そういう人に似ていると言われても…」と、つい本音がもれた。
それが聞こえたのか聞こえなかったのか、現地係員が「中野良子は20年位前、人気あったです」と補足した。
ああ、20年前の中野良子か。
まあそれならよかろう。
帰国後、早速、ネットで「中野良子」を検索した。
なんと、彼女は62歳で、思っていたほど高齢ではなかった。
しかも、70年代に中国で大ヒットしたその映画に出ている彼女は、さすがに美しかった。
あの時もっと喜んでおくべきだった。
【瀋陽→大連で乗った列車】