台北保姆記(4)
娘からお姑さんの変人ぶりや要領の悪さなどは常々聞かされていた。
今回の訪問では、ますますその頻度、内容ともに過激になった。
わたしが台北に到着した翌々日、お姑さん、台中から挨拶に出て来られた。
その日のお昼と晩ご飯はわたしが用意し、翌朝の朝ご飯はお姑さんにお願いした。
お姑さん、夜、寝る前に台所で何かゴソゴソやっている。
ガチャガチャとうるさい。
何をしてるのだろうと気にはなったが、まあ、台所を覗くことはしなかった。
すると、娘が部屋にやってきて、
「お義母さん、こんな時間に何してると思う?もう今から明日の朝ご飯の準備よ」と言う。
どんな御馳走が朝ご飯に並ぶのだろうと密かに期待したら、芋粥だと言う。
「サツマイモの皮を剥いているんよ」と。
「それなら明日の朝でいいじゃない」と言うと、苦笑しながら「ああいう人なんよ、姑は」と言う。
続けて、
「あんなに早くから水に浸けとかなくてもねぇ。芽が出るんじゃない」と嫌味も一言。
1時間以上もかかって朝ご飯を用意しても、出てくるのは芋粥と野菜炒めが2皿よ。
あれで本当に家庭科の先生、やれてたんかと思うよ。
と言いたい放題。
その姑の長女は料理上手で、孫娘は利発である。
娘が孫をわたしに預け友達とのランチ会へ出かけた日、その二人がやって来た。
長女は手早く数品用意し、共にお昼ご飯を囲んだ。
二人は日本語ができず、通訳係りの娘も居ないので、中国語で会話せざるを得ない。
パイナップルが入ったキャベツのサラダが美味しかったので、何で味付けしたのか尋ねる。
長女は「フォンミーツゥ」と答える。
フォンミー、聞いたことあるなぁ、、、、フォンミーって何だったっけ?
でも、長女の説明がよく聞き取れない。
困った顔をしていると、小学5年の娘が助け舟を出した。
「honey」と英語で一言。
おおそうか、蜂蜜か、フォンミーツゥは蜂蜜酢か。
英語で言ってもらえば直ぐにわかる単語である。
なかなか機転の利く子だ。
孫は是非ともお姑さんでなく、従姉妹に似て欲しいものだ。