★疲れただけの旅行
台北へ戻った翌日には、以前から会う約束をしていた台北在住の日本人に会った。
彼は、台北で暮らして35年、すっかり台湾人と化している。
奥さんが台湾人で、大恋愛の末、日本を捨てた。
でも、その奥さんも10年前に若い男と出奔してしまったそうだ。
日本人として冷静に台湾のこと、台湾国民のことを見つめることの出来る立場なので、彼の話はとても興味深く、上海料理をご馳走になりながら、延々と、3時間もレストランで過ごしてしまった。
その翌日は、台湾人の友達の新居を訪ねた。
広い、広いダイニングルームで、美味しい台湾の家庭料理をご馳走になった。
そして、その翌日には、日本から知り合いがやって来た。
彼女は、台北での結婚披露宴に出席するのが目的だったが、披露宴がキャンセルになってもやって来たので、わたし達は4日間、彼女に付き合うこととなった。
娘は娘で、キャンセルとなっても台北に来るという友人達の接待に追われた。
結局、台北に戻ってから娘と一緒に家で食事できたのは、わずか、一度だった。
従って、市場へ買い物に行ったのも、一度だけだった。
それにしても、今回の旅行は、まるで疲れに行ったようなものだった。
娘と過ごす時間も少なかったし、ゆえに、ゆっくり話す時間がなかった。
日本へ発つ前夜、夫もわたしも、ついつい娘に愚痴ってしまった。
台湾じゃ、長く居ても10日だねぇ。
それ以上は居られないよ。
空気は汚いし、騒々しいし、食べ物は脂っこいし…。
ちょっと散歩しようにも、暑いし、適当な場所もないし。
△子は、よくここで暮らしていく気になったよね。
ひどいことを言う親ではある。
しかし、心配には及ばない。
しっかり反撃する娘である。
そりゃあね、パパもママも、毎日、毎日、ホロホロ出かけるからよ。
日本に居る時みたいに、家でゆっくりするってこと、しなかったでしょ?
それに、台北じゃ、ずっと外食が続いたじゃないの。
去年のように、ちゃんと市場で買い物して、日本食を作ってたら、そんなことなかったと思うよ。
今度来た時には、もっと落ち着いて過ごしたらどうなのよ。
また気持ちも変わると思うよ。
そうだろうか。
日本に帰ると、二人とも生き返ったような気がした。
我が家が一番と思ってしまった。
これって、老化の兆しだろうか。