ポスト団塊世代のお気楽な日々

初老に近いおばさんが自由気ままに書き綴る自分勝手なひとり言

★孤独な肥満猫に会った日

2日連続でブログに登場したアビには娘の結婚式で台湾へ行った4月某日に初めて会った。
台湾は既に暑かった。
屋上へ上がるのも覚悟が要るような気だるい日の夕刻、夫、娘を伴い屋上へ。

わたしが「アビ、アビ」と呼ぶと、直ぐに猫の鳴き声が聞こえた。
娘はこれまでアビの鳴き声を聞いたことがなかったので驚いていた。
「やはり、わたしを歓迎してくれて鳴いたんだろうねぇ」
としみじみ言うと、娘が
「管理人さん、何日も餌をやっていなかったんじゃないの、きっと。
アビが人間に媚びるのは食べ物以外に考えられないよ」
と冷たいレスポンス。

普段、名前を呼んでも余程のことがない限り隠れ家から出てこない。
聞こえるのは「フー、フー」という人間を威嚇する声だけだという。
よっぽどお腹が空いていたのだろう。
姿を現すと、のっそりのっそりとわたし達の方へ近寄ってきた。
聞きしに勝るデブ猫ぶり。
餌鍋にカリカリを入れ、水も替えてやった。(娘が)
ガツガツ餌を食べているところを遠くから写真に撮った。


背中の毛が広範囲にわたって抜け落ちている。
娘に
「アビ、皮膚病に罹ってるんじゃないの?」
と訊くと
「アビがますます太ってしまったから、隠れ家に入るとき背中がが擦れてしまうんよ。
いっくらでも場所はあるんだから、広い所に変えればいいのにねぇ。
でも、あの隅っこが一番落ち着くんだろうね。
いつ見ても、あそこに隠れてるよ」
との返事。
見ると、あれでは中に入るのも大変、入り口が低すぎる、体が擦れてしまうのも当然、という場所がアビの家の入り口になっている。
奥の方は暗くて見えない。

アビは満腹になるまで餌を食べると、水を飲んで一服し、悠々と隠れ家に戻っていった。
わたし達に感謝の挨拶はなかった。

次の日も、次の日も、わたしは屋上へ上がっていった。
しかし、いくら「アビ、アビ」と呼びかけても、戻ってくるのは「フー、フー」だけだった。
アビの姿を見ることが出来たのはあの日だけだったのだ。