★ポイント・マニア
わたしの留守中、カメラ屋さんから電話があり、夫は、注文していた双眼鏡を取りに行った。
お金がなかったので、お寺の会計から35,000円、拝借したとのこと。
わたしはお寺の会計を担当している。
これは、立派な横領である。
門徒さんに知れたら、一大事だ。
ま、それはそれとして…。
現金がない時こそ、カードを使えばいいのに、と思って、わたしは、
「デ△デ△カード、使わんかったん?」
と訊いた。
夫は、おっ、そうだった、というような顔をした。
デ△デ△カードを使えば、100円で1点のポイントが付き、ポイントを貯めてそこで商品が買える。
「去年は、一眼レフも望遠レンズも、カードで買ったじゃない」
と言うと、夫は悔しそうな顔をして、
「そうだった。カード使うの忘れとった!腹が立つぅ!」
と、いかにも残念そうな顔。
「ま、350円分なんだから、いいじゃない」
と慰めてあげたら、夫は目を三角にして、
「そういうもんじゃないだろう!
10点だろうと100点だろうと、貯まるもんが貯まらんかったのが腹が立つじゃないか!」
と言い返す。
あ、そういうもんですか。
わたしは小さくなり、返す言葉を失う。
いつの間にやら、夫はポイント・マニアに変身していた。