★古稀のぼやき
サークルのメンバーのMさんより電話がかかってきた。
Mさんは、今年、古稀を迎える男性である。
サークルの重鎮で、わたしも心から尊敬し、頼りにしている人だ。
そのMさんが、ユリさんに僕のぼやきを聞いてもらいたくて電話した、と言う。
ありゃりゃ、一体、何だ?
このわたしが頼りにされることもあるんだ…。
Mさん曰く、
どうも、サークルが、自分の意図した方向からずれて来て、最近、サークルに行く気がしなくなった。
できてから10年以上になるのだから、メンバーも中身も変わっていくのは仕方ないけど、このままでは名前ばっかり知られるようになって、中身が伴わなくなって行く気がする。
Mさんのお話になることは、普段、わたしも感じていることでもあった。
30分くらい、二人で現状の問題点をぐだぐだ言い合ったが、そろそろ切ろうとした時、おもむろにMさんが言った。
僕は、後7、8年の人生だと思って暮らしている。
えーーーっ、Mさんのご両親は早世されたんですか?
いや、父が83で、母が85だったかな。
じゃ、まだまだ先は長いじゃないですかぁ。
たいてい親と同じくらいまで生きるらしいですよ〜。
いや、自分では、自分の判断と意思で物事ができるのは、77までだと思っている。
そうなんですかぁ。
だからね、残りの7年を無駄なく過ごしたい。
はあ。
たいていの人はお金が大好きで、一番大事だって言うでしょう?
そりゃそうですよ。わたしもお金、大好きです。
でも僕はね、お金は要らないのよ。時間が一番大事だと思ってるわけ。
………。
だからね、せっかくのサークルの時間も有意義に使いたいと思ってるってこと。
なるほど。じゃ、次回の例会で話題に出してみましょう。
電話を切った後、夫が言った。
「32分も話すなんて、ユリも結構、電話、長いんじゃない?」
電話魔の夫にそんなことは言われたくない。
ムッとして、わたしは言い返した。
「まっ、あなたと一緒にして欲しくないよね。
あなたは毎日30分だけど、わたしは、年に一度30分だからね」。
夫は聞こえない素振りをして隣室へ行った。