ポスト団塊世代のお気楽な日々

初老に近いおばさんが自由気ままに書き綴る自分勝手なひとり言

★蛇と格闘


冬の間、家の中で過ごすことの多かった飼い猫が、暖かくなってからというもの、昼夜を問わず、せっせと狩りに出かけるようになった。
外で格闘すればいいものを家の中に獲物を持ち帰るので、朝起きると部屋の隅に奮闘の跡が残っている。
どこから連れて帰るのか、ネズミの死骸にトカゲの尻尾、それに鳥の羽毛…。
2,3年前には錦鯉の死骸が玄関に転がっていたことがある。

今でも忘れられない光景がある。
まだ近くに畑があり、娘も小学生の低学年の頃だったと思う。

コゲという名前の雑種のメス猫を飼っていた。
コゲは夏になると、よく蛇を我が家に連れて帰っていた。
蛇は賢いので、猫に銜えられると、死んだふりをする。
他の生き物は死に物狂いで逃げようとするので、猫も面白がって弄び、殺してしまうのだ。
猫は動かない蛇を死んだものと思い、そのうち馬鹿だから忘れてしまう。

我が家に置き去りにされた蛇が、廊下をチョロチョロ這い回っていたり、掃出し窓のサッシレーンに潜んでいたりして、そのたびに度肝を抜かれたものだった。
たいていは、蛇を恐れない娘に追い払ってもらっていたのだが、その日は、娘は登校していたのだと思う。
わたし一人だった。

朝、いつものように居間に掃除機をあてていたら、壁とテレビの隙間で、何か動いたような気がした。
掃除機のスイッチを切り、近付いてみたら、何と、大きくて真っ黒な蛇がテレビのケーブルに巻きついていたのだ。

ギャーーーーッ!!

と思わず、ものすごい声を上げていた。

前日か夜中にコゲが連れ帰っていたのだろう。
ケーブルも蛇も黒いので、よ〜く見ないと蛇が巻きついているのはわからない。
もしかしたら、何日も前からそこにいたのかも知れなかった。

娘が帰宅するのは午後のこと。
それまで蛇と一緒に同じ部屋で過ごすのは気味が悪い。

わたしは決意した。
娘にできるのだから、わたしにできないはずはない、と。

わたしは、蛇がどこからでも出て行けるように、家中の掃出し窓と玄関、勝手口を全開し、箒(我が家にある一番長い物)で蛇を追い払ったのだ。

この武勇団を、夫や姉、友達など、会う人ごとに自慢げに話した。
誰もがわたしを尊敬の眼で見た。

「さすがに△子ちゃんの母親だねぇ!血は争えないねぇ」
と褒めたのは、血の繋がっている姉だった。

                                   2007/4/24

皆様の汗が少しでも引けば幸いです。