ポスト団塊世代のお気楽な日々

初老に近いおばさんが自由気ままに書き綴る自分勝手なひとり言

★『男が「離婚」を語るとき』/亀山早苗/ポプラ社


   〜 2007/3/9 〜

いつの間にか、「バツイチ」という言葉が市民権を得、わたしの周りを見回しても離婚した親族、友達、知り合いは5本の指では足りなくなった。
だが、離婚がさほど珍しいものではなくなった今でも、自分の離婚の経緯を声高に語る人は少ない。
ことに、男性は、離婚というごくごく私的なことを他人に語ることは稀だろう。

この本は、フリーライターの亀山早苗が、実際に離婚を経験した男性に直接会って、話を聞いて、彼女の視点で、現代の離婚事情を記したルポルタージュである。

結論的には、かつて離婚の大きな原因となった夫の浮気、暴力、借金という枠から外れた離婚が増えているということだ。
ある日、突然、妻から離婚を切り出される。
浮気などしていない、妻に暴力などふるったこともない、また、経済的にも不自由させていないのに、理不尽にも離婚の憂き目に遭う。
これは、一体、どうしたことか。
夫は戸惑うが、妻にはちゃんとした言い分がある。

一番大きな理由は、長年にわたる夫婦間のコミュニケーションの欠落である。
二番目は、最近、増加傾向にある(らしい)セックスレスである。
こうやって書いてみれば、決して不思議でもなんでもない。
当然という気がする。
だが、昔から、そういう夫婦はたくさんいた。
にもかかわらず、離婚件数は少なかった。
妻が我慢強かったからだ。
更に、妻が経済的に自立できていなかったからだ。
それだけのことである。

今や、「男は黙ってサッポロビール(だったっけ?)」などと寡黙であることが男としての評価を高めるわけでもなく、結婚前の女性の処女性が求められる時代でもなくなった。
この20年で、日本人の価値観は大きく変化したのだ。
男も喋らなければならない。
時には、妻とくだらない世間話をし、真剣に将来を語り合わなければならない。
努めて妻と意志疎通をはからなければならないのだ。
妻側に不満を溜めさせてはならないのだ。

男性にとっては、まっこと厳しい時代が来たものだ。


    ********************


離婚後、夫の年金分割ができるようになり、定年離婚が増えるのでは、と一時、騒がれたことがある。
現実にはどうなのだろうか。
全く実感のなかった好景気が数年続いた後、再び深刻な不景気がこの先何年も続きそうな気配である。
夫の年金を分割しても、それなり豊かな生活が送れる熟年夫婦というのは、ごくごく限られているのではなかろうか。
そうしてみると、熟年離婚も、そうそう簡単ではないのがわかる。
結局、何かしら不満はあっても、お互いが、我慢を重ね、添い遂げるしかないのだろう。